
株式会社 幻の酒 |
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住 所 : 新 潟 市 中 央 区 白 山 浦 2 - 1 - 2 8 | ||
設 立 : 2 0 0 0年 | ||
事 業 内 容 : 酒 類 小 売 業 | ||
U R L : h t t p : / / w w w . m a b o r o s h i n o s a k e . c o m / |
「父の還暦祝い、何にしよう。記念になるお酒はどうだろう」
そう思ってネットで検索すると出会うのが「幻の酒」のWebサイトだ。このWebサイトは単なる日本酒のネットショップではない。
「還暦に贈る真紅の名入れ酒」というオリジナルギフトが大人気。酒のラベルに贈り主からメッセージや名前を印刷する一手間かけたサービスが、感動的なギフトを探している顧客の心をつかんでいる。また、贈り先の方が生まれた日の新聞を取り寄せ同梱するセットも好評だ。
幻の酒は、2000年に松本伸一社長が新潟の酒をネット販売する会社として創業した。 大手インターネットショッピングモールへの出店の一方、幻の焼酎ブームを受け、取り扱いアイテムを増やして一般酒店への卸販売も行った。
ただ、小売と卸売ではビジネスの性質が異なる。
「勘と経験と度胸で進みましたが、卸売では事業拡大に比例して在庫も増えていきました。売上はどんどん上がるが粗利はないという状況でした」
支援機関のサポートで気づきここにしかない酒を

転機が訪れたのは、地元の支援機関であるにいがた産業創造機構が2005年に関東IT経営応援隊事業(当時)の一環として開催したセミナーに参加してからである。
セミナー後、個別コンサルティングとしてITコーディネータ清野和司氏から訪問アドバイスを受けた。その際、清野氏が同社のビジネス内容を整理した2枚のシートが松本社長に気づきをもたらした。
「整理された書類を見て、新潟の酒を全国に売るという創業の趣旨を確かめ、卸売からは撤収すべきと確信しました。ここではっきり気づいたのです」
当時の売上は2億円。売上額では卸売の方が比率が高かったが、大きな決断を下した。約半年かけて段階的に卸売事業を終了させた。
ネット販売では価格競争に巻き込まれないよう、オリジナル商品を創り出した。松本社長は「自社でブランドを作ろうと酒蔵からお酒を譲っていただきました。ラベルを作ってストーリーを含めて販売する方法です。地域の著名な方にラベルを書いていただいたこともありました」と振り返る。
ネットの世界は顧客からさまざまな意見が返ってくるのもメリットだ。顧客の声と市場動向を照らし合わせ、還暦祝い商品の開発に至ったという。
さらに地ビール、ブライダルなど複数の専門サイトを構築し、顧客への多様な入口を設けることによって新規顧客を開拓している。
新潟の酒の酒粕も!Facebookで情報交流
こうした取り組みの結果、首都圏の顧客を中心にネットショップの販売が拡大。現在は年商1億6000万円にまで到達している。
ただ、ギフト商品は性質上リピート需要が少ない。
松本社長はリピート可能な商品として、発酵食品のブームもあり、酒粕に力を入れている。
関心を高めファンを増やす策として「Facebookページ」で酒粕コミュニティを作り、料理やお菓子のレシピなどの情報交流を推進中だ。このページからは直接販売サイトに誘導せず、市場の活性化のみを行っている(「酒粕」で検索すると同社のサイトが上位に表示されるので、あえてFacebookからのリンクはしていない)。
Facebookは、社内外のコミュニケーションにも積極的に活用。メンバー以外には見えない閉じたグループを作れる機能を用いて酒蔵と情報交換をしている。また、従業員の日報システムとしてグループウェア代わりに利用中だという。 「将来的には有料の国産グループウェアを導入するつもりですが、そこに行くまでのプロセスとして無料で使えるFacebookは役立っています」と松本社長は微笑む。
新潟の地酒から生まれる酒粕は新たな商材であり、観光への貢献も期待される。地元での酒粕販売店の出店も構想しているという同社は、ネットで磨いた個性によって地域にさらなる価値を提供するに違いない。

